風俗の裏引きトラブル!200万円を請求された事案

弁護士 若林翔
2019年08月23日更新

今回の事案は,風俗の裏引き(裏っぴき)トラブルに巻き込まれてしまった神奈川に在住する30代の相談者。しかも2回目?!

風俗トラブルといえば,盗撮,本番強要がよくあるトラブルだが,裏引きに関するトラブルも少なくはない。

以前にデリヘル嬢と個人的に連絡を取っていたという理由だけで罰金として100万円を渡してしまっていたようで,今回再度同額の100万円をスカウトとデリヘル嬢から請求されてしまった相談者だが,当法律事務所相談することで無事に示談金10万円で解決したというそんな事案。

裏引きとは何か?

そもそも風俗の裏引き(直引き)とはなんなのか。


風俗業界でいう「裏引き(直引き)」とは,お店に勤務しているキャストらとお店を通さずに直に会いお金を渡してサービスを受けること。

芸能界で話題になった会社を通さず個人で営業して個人でお金を受け取るという闇営業と同じ理屈だ。

もちろんお店はキャストをお客さんに紹介することで売上の何%かを得ているため,裏引き(直引き)されると売上はゼロ。
そういった事情からお店としてはキャストが裏引きでお客さんと会っていた場合に高額な罰金制度を導入しているところがほとんどなのが実情だ。

例えば,キャストが裏引きでお客さんに会えばお店の売上がその分減ってしまうだけでなく,キャストがシフトに入らないことによって新規のお客さんにサービス提供できなかったりして1回分のサービス以上の損害が発生する。

そのため,お店としては裏引き・直引きに対して高額な罰金制度を設けて厳しく取り締まっている。

なぜ,スカウトが損害賠償を請求してくるのか??

スカウトは女の子をお店に紹介することで生計を立てている者であり,そのスカウトがどうやって収入を得ているかといえばもちろんお店からの紹介料。
紹介料といってもマチマチで,1回紹介したら◯万円がスカウトに支払われるシステムだったり,紹介された女の子が毎月売り上げた金額の何%かがスカウトの懐に入る,というシステムなど様々な運用がなされているのが夜の業界の慣習という。

その中で,今回のスカウトはおそらく後者のシステムを採用していて,相談者がキャストを裏引きしたことによってもらえるはずの紹介料がもらえなくなってしまったために,その損害を賠償しろと言ってきたのではないかと推測できる。

むしろ,ただ単に女の子と密に連絡を取り合っていて,お金を取れそうなお客さんから因縁付けて半ば詐欺・脅迫のような形で絞りとっていただけなのかもしれないが。。。

裏引きトラブルの経緯

今回相談者が裏引きトラブルに巻き込まれてしまった経緯はこうだ。

相談者は横浜にあるデリヘルを良く利用しており,その中でもお気に入りの女の子がいたらしい。
独身で割の良い仕事にも就いていた相談者は,お金に糸目を付けずにその子のサービスを頻繁に利用していた。
女の子としても「太客は大事にしたい」という思いからお店を通さずに直接連絡を取りたいと思うようになり,実際に連絡先を交換した

何度かやり取りをしている内に,その女の子が仲の良かったスカウトに相談者と連絡先を交換したことを軽はずみで喋ってしまう。
裏の世界で長く生きてきたスカウトだからこそ,お金の匂いをすぐに嗅ぎつけたのだろう。
女の子からその話しを聞いてから日も経たずにすぐさま相談者の連絡先をその子から入手して直接連絡を取ってきた。

「◯◯と直接連絡を取っているようだな。このことは◯◯が所属するデリヘル店でも利用規約に反するし,罰金200万円ということは明示されているはずだ。」

いきなりこのような内容のメッセージがきたものだから相談者は不安になり,スカウトの言うがままに結局100万円近くを渡してしまった。
その際に合意書のようなものを巻いたらしいのだが,その文書の中には100万円の内80万円は女の子に渡すという内容だったらしい。
そして,実際に相談者はスカウトに100万円を手渡ししてトラブルを解決しようと努力した。

が,蓋を開けてみたら女の子は,
「80万円なんて受け取っていない」
「その100万円は全てスカウトが持っていって私のところには1円も残ってない
改めて80万円を私に渡せ!
となんとも信じがたいことを言い出した。

その連絡を受け取った相談者はどうしていいか分からず放置していたが,なんとここで例のスカウトが再登場する。
「あれほど女の子と連絡を取るなと言ったのに,また連絡を取ったらしいな。」
「連絡を取るな,ということは連絡を受け取ってもダメだ。」

スカウトのなんとも理不尽な要求に対して不安に思った相談者は,既に100万円もの大金をスカウトに渡していたということもあり,今後歯止めがきかずにもっと大金を請求されるのではないかと怖くなったためグラディアトル法律事務所に相談しに来た,というのが事の経緯だ。

土日祝日も24時間対応の弁護士事務所

相談者は仕事も忙しく9時〜5時でしか空いていない事務所には相談できなかった。
そこで,24時間対応の弁護士とネットで検索して弊所に相談に来たようだ。

電話で内容を簡単に聞いた担当弁護士はすぐさま30分無料の電話相談に切り替えて相談者への事案と今後どうしたいかという要望の聴取と,今後どういう風に対応していけばいいかのアドバイスを行った。

相談者の希望

①今後請求されないで済むなら多少の解決金は支払う意思がある
②ただし今後一切支払うつもりはない
女の子もスカウトも今後自分には近寄って欲しくない
④特に女の子に関しては嘘を吐いていると思うので絶対に連絡をとってこないで欲しい


何百何千件という風俗トラブルの相談を受けてきた弁護士として,常に解決策を相談者に提示し30分の無料相談の中でも相談者が満足してもらえるような対応を目指してきた。
今回の事案もそれほど複雑ではなくお互いが納得のいく形で解決できるのではないかと感じた。

弁護士のアドバイス

本来であれば払う義務のない金銭ではあるが,ヤクザまがいの人間と縁をすっぱり切れるのであれば多少の解決金も悪い選択肢ではない。
②今後似たような理由で請求してきた場合には刑事事件化も考えるべき。
③④合意書の中で接近・接触・口外禁止条項を設けることで将来のトラブルを防ぐことが可能。

という4点を相談者にアドバイスした。

土日祝日も対応してもらえて,すぐに事件解決に向けて動き出してもらえるということで相談者は弊所の担当弁護士に依頼をしてくれた。

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スカウト含めた相手方との交渉

依頼者からの意向を受けて担当弁護士が早速事件解決に向けて当日中に動き始める。

弁護士からスカウトに電話で連絡をしたところ,なんとスカウトが依頼者の家に直接行っていたことが判明した。
しかも依頼者が当事務所に電話をしてきた丁度その日に。

依頼者は仕事もしており,出先で弁護士と相談をしていたためスカウトと鉢合わせすることはなかったので一安心だが,もしスカウトが依頼者と対面する状況になってしまっていたらどんなトラブルが生じていたか分からない。
なにせ相手のスカウトは,法律上支払義務の発生しないような裏引き問題で因縁をつけて100万円を請求するという世間一般でいうところの反社(反社会的勢力)に近い存在であろうことは想像にしうるからである。

なぜ依頼者の家に直接行ったのか,弁護士はスカウトに問いただした。

どうやら,スカウトとしては女の子の話しが信用できずに依頼者に直接確認したかった,とのことだった。
そうであれば,従前どおりメールや電話でやり取りをすれば良いし,その方が女の子に知られることもなく秘匿性も高い通信手段を使えるだろう。それにもかかわらず,なぜスカウトが依頼者の家に直接行ったかといえば,直接脅しをかけに行ったと考えることもできるだろう。

すでに依頼者は弁護士に依頼しており今後一切の連絡・接触をしないことをスカウトに約束させるとともに,スカウトの要望は一体なんなのか,電話での交渉を行った。

相手方の要望を聞き出す

スカウトの要望は,女の子と直接連絡を取ったという風紀違反で罰金を支払えという単純なものだった。

もちろん弁護士として相手方の要求を鵜呑みにするわけもなく,「そもそも,その罰金に法律上の根拠はなく,弊所依頼者には支払義務がないものと考えている。以前は依頼者から女の子と連絡先を交換してしまってすでに罰金を支払っている。しかし,今回は女の子が依頼者に突然連絡を取ってきて,依頼者はそれに対して何度か返信をしただけだ。依頼者になんら落ち度はない。」と主張した。

ヤクザまがいのスカウトが弁護士の主張におとなしく従うといった例はまずないが,主張自体は正当だということがスカウトに伝わったのか,「それであれば30万円を支払ってもらえれば今回の事はチャラにする。」と提案してきた。

弁護士としても,ようやく相手方が交渉の場に乗ってきて一安心だ。
道理が通じないような相手では交渉自体がうまく行かない可能性も高いし,交渉がうまく行かないということは,つまりは依頼者の希望が達成されないということになってしまう。

もちろん,依頼者の希望として支払義務のないものをしっかりと拒絶して,強気に交渉して欲しいとのことであれば,そういった対応をする。しかし,今回の場合では,多少の金銭を払っても早期にかつ穏便に終わらせて欲しいとの希望だった。

ただし,あくまで交渉の主導権を相手方に譲るつもりはなく,弁護士は「30万円を支払う気はない。スカウトと女の子2人に対して合計10万円以上での示談はないと考えている。」と伝えてその日の交渉は終わった。

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1週間の交渉で無事に解決!

その後何度か弁護士とスカウトで交渉を重ね,結局相手方が折れる形で10万円の示談金を依頼者が支払うことで合意した。
依頼者としては,当初は100万円を請求されていたし,弁護士を挟んでも30〜50万円で示談されるだろうと見込んでいたらしく,10万円で解決したと聞いて非常に喜んでいた。

その合意書に,接近・接触・口外禁止条項を盛り込むことで会社バレ・家族バレを防ぐ抑止力にもなる。当然その約束を破れば相手に違約金という形で請求することになる。

さらに,今回の事案では,前にも裏引きで金銭を要求されていたことから,どんなトラブルに起因する・誰と誰のトラブルで・何に対する解決金で・その解決金は相手方が受領し・当事者間に債権債務関係は残っていないと確認する旨も合意書に記載した。
これによって,依頼者が今後スカウトや女の子からトラブルを蒸し返して金銭を要求されることもないだろう。

お金のやり取りは当事務所の口座を経由することで,依頼者の口座情報(本名含む)は相手方には伝わらず余計な情報を与えなくて済む。

依頼者が2回目の100万円を支払う前に当事務所に相談してくれたことで10万円で無事に解決することができた。
もし,既に支払ってしまった後で相談にきていたら,スカウトに請求したり場合によっては訴訟を起こさなくてはならなくなってしまい,回収可能性という意味でも非常に難しい交渉になってしまうところであった。

こうして,依頼者は平穏な日常を取り戻すことができた。

余談

極めて稀なケースではあるが,今回の相手方であるスカウトが,担当弁護士の手際の良い交渉に関心したのか,依頼者とのトラブルとはまた別で弊所に依頼したいことがあるとかなんとか…

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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