被害届って何?出されたらどうなる?出されてしまったらどうすればいい?

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弁護士 若林翔
2019年02月03日更新

被害届とは

被害届とは,ある犯罪の被害に遭った人(被害者)が,いつ,どこで,どのように,誰から被害を受けたかということを記載したものであり,ある犯罪が起き,その被害に遭ったから捜査してくれという趣旨で警察に提出する書面のことをいいます。

警察が犯罪について捜査をする際には,「捜査の端緒」というものがきっかけとなります。

この捜査の端緒というものには,職務質問,現行犯逮捕や,警察への通報などが含まれ,被害者による被害届の提出というのも,捜査の端緒のひとつになっています。

被害届を出していないから絶対に捜査活動がスタートしない,という性質のものではありませんが,他の捜査の端緒が及びづらい詐欺事件や,家庭内暴力(DV)事件,風俗店におけるトラブルなど,発覚しづらい犯罪が問題となる場合には,被害届の提出が捜査開始のきっかけになることが多いです。

被害届と捜査活動

被害届が提出される時期

被害届が提出される時期というのは,犯罪の種類・性質や被害者の性質,行為者と被害者の関係など,種々雑多な事情により左右され,一概に「絶対にこのタイミングで被害届が出されます!」と言える性質のものではありません。

法律上も,被害届はいつまでに提出しなければならないなどの規定も存在しません。しかしながら,ほとんどの犯罪には公訴時効というものがあり,長い時間放置してしまうともはやその行為を罪に問えなくなってしまうということもあります。また,犯罪となる行為から長時間が経過してしまうと,証拠が散逸してしまい,その収集が困難となることにより,結局検察官がその犯罪を立証することができなくなってしまう可能性も出てきます。

多くの場合は,例えば傷害や強盗,窃盗などの犯罪の被害に遭った人は警察に連絡し,警察から事情聴取される中で被害届の提出を促され,その場で提出するという形をとります。

被害届が提出されたときの警察の対応

犯罪の被害に遭ったと警察に申告し,被害届を提出するという意向が示されれば,基本的に警察がその被害届を受理し,捜査が開始されることになります。法律上,被害届は届出で足りるので警察が受理をする旨の規定等はなく,必要事項が記載してある被害届については警察は受け取らなければなりません。

もっとも,犯罪を構成しないような事実関係であったり,あまりにも些細な出来事であったりすると,事実上,警察が被害届を受理してくれないということもあります。他にも,明らかに証拠がない言いがかり的な事案であっても被害届を受理しないことがあります。

被害届が受理されると,警察はそれをもとに犯行現場とされる現場の検証や,目撃情報の収集,監視カメラの確認などの各種捜査に着手します。

捜査の開始

被害届を受理すると,警察は間もなく上記の捜査に及び,被害届により申告された犯罪が本当にあったのか,それが法律上どのような犯罪と評価されるかなどのことを判断します。

その中で,警察が行為者を逮捕するかどうかを検討し,犯罪を行った疑いがあり,証拠隠滅の可能性等から逮捕をする必要があると認められる場合には,裁判所に逮捕状の請求をしたうえで,その逮捕状に基づき行為者が逮捕されるということになります。

微罪処分と書類送検

警察が捜査を一通りやりおえると,捜査は次のステージに進みます。

まず,犯罪が存在することが明らかではあるが,それを裁判にかけたり罰金をとるなどするほどのものではない非常に軽微なものであると警察が判断した場合や,被害者が犯罪を処罰することを望んでいないような場合であれば,警察限りで事件を終結させる微罪処分という手続をとることになります。微罪処分ということになれば,その後裁判やその他の刑事手続が後に続くことはなく,そこで事件が完全に終了します。

続いて,警察が事案を重く見た場合,テレビなどでよく報道される書類送検という手続に進むことになります。書類送検とは,警察が収集した証拠資料を検察官・検察庁に送付する手続のことをいい,その後の捜査は検察庁が主導し,検察官が行うこととなります。

被疑者が逮捕されているような場合には,このタイミングで捜査のためにさらに長期の身体拘束である勾留という手段を講じるか否かを検討します(10~20日間の身体拘束。逮捕と合わせると,最長で23日間留置施設に置かれることとなります。)。

検察官がさらに捜査を尽くし,犯行の悪質性や,事案の重大性,処罰の必要性などを考慮し,最終的にその被疑者にどのような処分を下すべきかを検討します。

公判請求(起訴)と略式命令請求,不起訴処分

検察官が決定する処分としては,正式な裁判に進み,懲役や罰金を求める公判請求(起訴)という処分,正式な裁判を行うことなく,簡易な手続で罰金のみを求める略式命令請求,被疑者に対する処分を行わないとする不起訴処分という3つがあります。

弁護士の対応

被害届提出前の弁護士

被害者により被害届が提出される前であれば,弁護士はその行為を行ってしまった者の依頼を受け,被害者とコンタクトをとります。

ここで,いわゆる示談という手段をとることができます。
示談とは,被害者と話し合い,交渉をすることにより,謝罪と示談金の支払いを条件に,被害届を出さないようにしてもらったり,処罰を求めないようにしてもらうことをいいます。示談の内容は事案によって様々であり,多くは謝罪の意思を明確にすること,示談金を支払うこと,当該事件について双方口外しないことを約束して示談書(合意書)を交わすことによって成立します。その他にも,盗ってしまった物を返還することや,盗撮トラブルであれば盗撮してしまった写真を削除すること,カメラを被害者に引き渡すことなどを示談の内容とすることが多いです。

被害届の提出前に示談がまとまれば,事件が明るみに出ることはなく,警察に発覚する可能性もほとんどなくなるため,何らの刑事手続も進むこともなく安心して元の生活に戻ることができるといえます。そのためには,何らかの事件を起こしてしまったと思う方は,一刻も早い弁護士への依頼が重要になるといえます。

被害届提出後の弁護士

被害届が提出されてしまった場合には,行為者から依頼を受けた弁護士が被害者とコンタクトをとり,被害届の取下げを願い出るということをします。

この場合でも示談によって被害者に被害届の取下げをしてもらい,被害者の処罰感情を抑えてもらったうえで,警察に捜査の手を止めさせるということになります。

被害届が提出されてしまった後は,弁護士であっても捜査機関の捜査がどれほど進展しているのか把握しきれない場合があります。いつ警察がその件で逮捕に踏み切るかも分からないため,その事件を微罪処分や不起訴として終わらせる方向に動かしたりして,普段の生活を安心して送るためには,一刻も早く弁護士に依頼し,被害者との示談交渉をまとめ,被害届を取り下げてもらうということが重要になってきます。

被害届が取り下げられたからといって,必ずしも事件が微罪処分や不起訴処分として終了するというわけでもありませんが,その後に公判請求された場合などにおいては,示談がまとまっており,被害者の処罰感情がなくなっているという事実は,被告人の情状にとって非常に有利に働きます。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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