《風俗トラブル予防法》デリヘルで本番した後、ふと不安になって弁護士に相談すると・・・

弁護士 若林翔
2020年07月15日更新

今回紹介させてもらう風俗トラブルは、デリヘルで本番をしてしまったがキャストやお店からの執拗な連絡や催促がない場合、どのように対応すべきか。またどのようなことが起こりうるのか

その場の流れにまかせて取った行動が犯罪に繋がるのではと不安になり、当法律事務所に相談が寄せられたケースを紹介します。

弁護士との相談に至るまで

相談者は東京新宿在住の30代後半の妻子持ちの男性。

仕事明けの久しぶりの休暇、仕事疲れでリフレッシュをしたいと考えた相談者は池袋西口のホテルにデリヘルを呼ぶことにした。
相談者は初々しい感じが好みだったので、入りたての新人キャストを指名した。

いざプレイが始まり、いわゆる素股をしてもらっている最中に、動きの流れで誤って挿入。
キャストは嫌がる素振りがなく拒否している感じを受けなかったので、そのまま本番行為を続けてしまった。

プレイが終わった後、キャストは「本番は禁止行為だからお店に報告しないといけないけど、もしお小遣いをくれるなら、お店に言わないであげると言ってきた。
相談者は手持ちがなかったので、「また近々指名するから、そのときにお小遣いあげるね」と口約束。

するとキャストは、「じゃあ連絡先教えておいて。そして、指名する日がいつになるか連絡して」と。
相談者は、個人用携帯だとなにかのきっかけで妻にデリヘル利用していたことがバレる可能性があるかもと考え、会社携帯の電話番号を教えることに

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その後帰宅し、翌日に知らない携帯番号から電話があったものの、誰かもわからないし必要ならまた電話がかかってくるだろうと放置。
なおキャストの子に対しても、予定がわかってからにしようと連絡していませんでした。

それから数日後の週末、ふと不安になり”本番トラブル”についてインターネットで検索。

すると検索結果の多くに「キャストやお店からの恐喝」「本番行為は犯罪なので警察に捕まる」など相談者の不安を煽る言葉が目に飛び込んできた。
そして色々読んでみるものの、自らの状況と似ているようなケースはあったが、それがそのまま自分に当てはまるのかまでわからず刻々と時間が過ぎるだけ。

ただ共通してあったのは、キャストやお店が被害届を提出し警察沙汰になれば、家族や会社に知られる可能性があるとのことでした。

関連記事:風俗トラブルは家族や職場にバレてしまうのか?

相談者はいてもたってもいられなくなり、これはもう弁護士に相談するしかないと決意。
風俗トラブル・本番トラブルの対応をしている法律事務所を探していると、土日対応している当事務所を見つけ、相談に来られました。

相談時に弁護士がどのような話をしたか、依頼となったあとの方針決定

弁護士は、相談者から上記事情を聞き今後想定される動きを説明。

たしかに知らない携帯番号から1度連絡があっただけなので、このまま何もない可能性があると。
しかし一方で、本番行為をしてしまっている以上、すでにお店やキャストが被害届を提出していると十分に考えられることも。
そして相談者がキャストに会社携帯の電話番号を教えたということから、調べたうえ会社に連絡がいくこともありうると。

すなわち、刑事事件化リスクにくわえ、家族バレや職場バレのリスクは否定をできない現状にあると言わざるを得ないことを伝えました。

風俗トラブル、本番トラブルの一般論については、以下の動画もご参照ください。

他方で、上記リスクはあるといえども、お小遣いの件からして本番についての黙示の同意があったと考えられると。
すなわち、被害届が出されてしまったとしても警察との交渉において同意があった旨を主張していくことによって、強制性交(強姦)ではないとして不起訴処分等を勝ち取れる可能性があることも。

相談者は、刑事事件化はもちろん、家族バレや職場バレはなんとしてでも避けたいとのこと。

弁護士は、そうであればキャスト及びお店に連絡し、示談交渉を行い、被害届の提出・取り下げなど刑事事件化しない条項や相談者の関係者に口外しない条項などを記載した合意書を締結する必要があることを助言。

相談者は、もはや自分じゃ対応できないのでお願いしたいとご依頼を受けることに。

方針としては、お店に連絡しキャストも含めた示談交渉を行い、合意書締結を目指すことで決定。

なお示談金については、相手方や状況などにより相場があってないようなものなので、一定程度いつでも支払えるよう用意しておくようにとも。
というのも、風俗店とのトラブルの場合、業界的にお金に関しては特にシビアなことが多いがゆえ、すぐに支払える状況にあるのかどうかが示談できる大きなポイントとなるからです。

依頼から解決に至るまで弁護士が行ったこと

弁護士は早速お店に連絡。
依頼者の代理人になった旨とともに、禁止行為である本番をしてしまったことについてまずは謝罪
あわせて、今後は依頼人に変わり交渉の窓口となるので、依頼者に直接連絡することは差し控えるようにも伝えました。

お店の責任者は、依頼者に直接連絡しないことは了承。

一方で、本番行為をされたことについては翌日キャストから聞いたとのこと。
キャスト曰く、”決して本番を受け入れたわけではなく、怖くて拒否できなかった”とのことでした。
そこで、すぐ依頼者に電話したが繋がらず折返しもない状態だったので、キャストともに被害届を提出すべく警察に行ったとも。
なお警察からは、「諸々資料を持ってきてくれれば、被害届を受理することはできる」と言われたので、資料を準備している状況と。

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弁護士は、このままでは刑事事件化し家族バレ・職場バレとなりかねないので、示談できないか検討してほしいと打診
お店の責任者は一応キャストに伝えてみるとのことで話を終えました。

しばらくした後、責任者から示談金100万円なら示談することが可能との連絡が。

弁護士は、以上の経緯を依頼者に報告。
示談金については可能な限り減額交渉してみるが、被害届が受理されそうな段階なので厳しい可能性があると。

そして金額が金額なので、あらためて刑事事件化や家族バレ・職場バレのリスクはあるが、示談金を支払わずに戦う選択肢があることも。

しかし、依頼者としては、一定程度のお金を払ったとしてもリスクをなくしたい、そして早期に解決して安心したい、とのご要望でした。

依頼者は、減額されるに越したことはないが示談をしていきたいので、100万円を用意しておくとのことでした。

弁護士は翌日、依頼者の要望を踏まえ再度責任者と交渉。
ちなみにお小遣いの件は知っているかを確認。

こちらの認識としては、本番について明確な同意はなかったものの、”お小遣いの話からして怖くて拒否できなかったことはないんじゃないか”と考えていると。
すなわち、黙示の同意があり、強制性交(強姦)ではないものではあると。
ただ本番という禁止行為をしたことは事実なので、半額の50万円で解決できないかと交渉。

なお、もし本当に相手側の同意がなく本番行為を行った場合は刑法における強制性交等罪に該当し,懲役が科される可能性があります。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

引用|刑法177条

責任者は、そもそもお小遣いの件を知らなかったのでキャストに確認してまた連絡するとのこと。

翌日、責任者から連絡あり、キャストに問い詰めると、”お小遣いの話はしたが依頼者から連絡がなかったので、怖くて拒否できなかったと話をすり替えた”とのことでした。
そして、弁護士の言い分どおり、無理矢理本番したのでなければ50万円で示談するとのことでした。

その後、弁護士はお店及びキャストを含めた3者間で合意書を締結。
内容は、依頼者の要望である家族バレ・職場バレを防ぐべく、被害届の提出・取り下げなど刑事事件化しない条項や相談者の関係者に口外しない条項などを記載したもの。

最後に相手方の指定する口座に示談金を振り込み、事件は1週間のスピードで無事解決するに至りました。

今回の事例に即した弁護士からのコメント

今回の事例では、本番について明確な拒否もなく、むしろ小遣いを要求していたことから同意があったとも評価できる事案でした。

そのため、刑事事件化になったとしても同意があった旨を主張して戦うという選択肢もあった事案です。

しかし、依頼者としては刑事事件化や家族バレ・職場バレのリスクをなくしたい、早期に解決して安心したい、そのために費用がかかってもよいというご要望でした。

そこで依頼者のご要望に従いつつ、弁護士の今までの経験から示談が可能と思われるギリギリの減額交渉ライン、半額の50万円という金額を提示することにして、無事に早期解決ができた風俗トラブル事案です。

また今回の事例は、数ある風俗トラブルの中でもどちらかというと少ない本番トラブルのケースであるといえます。

というのも、本番や盗撮などをしてしまった場合、たいていはプレイ途中またはプレイ後にキャストが店に連絡し、店舗の責任者や男性スタッフが現場に駆けつけてくることが通例だからです。
また、店舗の責任者や男性スタッフが現場に来ない場合であっても、店から何度も電話やショートメッセージなどで連絡がくることがほとんどです。

その意味で、責任者や男性スタッフが現場に来ず、連絡も1度しかなかった今回の事例はレアケースではあります。

しかし、だからといって本番をしたことが許されたわけではなく、また見逃されたものと安心することはまったくできません。

今回の事例のように、お店及びキャストが被害届を提出するべく警察に出向いていることは往々にしてあります。

今回の依頼者は、不安に感じて弁護士に相談・依頼したことで被害届の提出をなんとか食い止めることができましたが、もし何もしないままでいると刑事事件化していた可能性は大いにあります。

具体的には、いきなり警察から任意で事情聴取したいとの連絡がくることが多く見受けられます。

そして、もはやこのような状況になってからになると、弁護士に依頼したといえども示談交渉のハードルは相当高く、示談に応じてくれない場合があることはもちろん、示談となるにしても示談金はかなり高額になる傾向にあります。

すなわち、本番をしてしまったにもかかわらず何も対応をせず放置していると、家族バレ・職場バレはおろか、刑事事件化にまで発展する事態は十分にあるということです。

ですので、本番をしてしまった場合には、すぐさま弁護士に相談することをオススメします。

店から連絡が来ていない状況であったとしても、のちに連絡が来た場合の対応方法を弁護士はアドバイスができます。
実際、店から連絡が来た際の対応方法がまずく、連絡前に相談いただければよかったのにと思うケースがいくらでもあります。

なお弁護士に相談することについて、自分は大丈夫と思われる方、他方で、恥ずかしさやためらいなどから躊躇される方もいるかもしれません。

ですが、自らの状況を法の専門家である弁護士の視点から助言を受けることは、想定されるトラブルのリスクや不安の解消に役立ちうるものといえます。

したがって、大きなトラブルに発展することを未然に防止する意味合いでも、ぜひ弁護士に相談しましょう。

最後に、本番トラブルはもちろん、風俗トラブルに関するご相談は、遠慮なく当事務所にご相談ください。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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