ウソーン!住居侵入して強制性交した男(かずあき)が無罪。被害女性が「かずき」と勘違い!?

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2020年02月12日更新

令和元年12月17日,大阪地裁でまたもや性犯罪の不成立判断が下されました。

このニュースが飛び込んできたとき,思わず言ってしまった。「うそーん!」と。

早速,ニュースの概要を見てみましょう。

「かずきやんな」事件のニュース

日刊スポーツによると,認定された事実は以下の通りです。

暗闇で勘違い性交、罪成立せず 偶然名前1文字違い

面識のない女性宅に侵入し、女性と性交したとして男性元被告(38)が準強制性交と住居侵入の罪に問われた裁判で、女性が元被告を知人男性と勘違いした上、元被告も誤信させた認識がないとして、大阪地裁(渡部市郎裁判長)が準強制性交罪の成立を認めない判決を言い渡していたことが24日、分かった。元被告と知人の名前が、たまたま1文字違いだった。

判決は昨年12月17日付で、住居侵入罪のみで懲役8月(求刑懲役5年)とした。検察側、弁護側双方控訴せず確定した。

判決などによると、元被告は統合失調症で、2018年8月ごろ、大阪府寝屋川市の女性が住むマンション前を通った際、「ここやで」と声が聞こえ、運命の人がいると考えた。同年9月10日未明、1階の女性宅に無施錠のベランダ窓から侵入。女性が「カズキやんな」と知人の名前を言ったところ、元被告は「カズアキ」と自分の名前を呼ばれたと思い込み、特に返答はせず暗い室内で性交。終了後、女性が勘違いに気付いた。

検察側は、元被告が自身を知人だと誤信させ、女性を「心理的に抗拒不能」な状態にし性交に及んだと主張。だが渡部裁判長は、1文字違いだったため自分の名前を呼ばれたと勘違いした元被告が、女性が性交に応じると思い込み、誤信させたという認識がなかった可能性があると判断した。(共同)

https://www.nikkansports.com/general/news/202001240000767.html

以上が事実だとすれば,これはとても特殊な事案ですね。
窓から侵入してきた上,そのまま性交に及んでも違和感を抱かれない「カズキ」さんとはどのような方なのでしょうか…。

準強制性交が無罪となった理由は?

今回の裁判では,準強制性交罪の成立が争われていたようです。

事実が上記のとおりだとすれば,女性は知人だと勘違いしていたとは言え,男性が積極的に女性を騙したわけでもないですし,心神が喪失していたり,抵抗できない状態であったとはいえません

そうだとすれば,無理やり性交等をしたとは言えないので,強制性交罪は成立しません。

また,仮に女性が抵抗できない状態にあったとしても,男性が「女性が抵抗できない状態だ」と認識していなかった可能性があるということで,準強制性交罪の故意が否定されたものと考えられます。

大まかに言えば以上のような判断だった可能性が高いわけですが,「無理やり」とは法律的にはどのような状態なのでしょうか。犯罪の故意とは何でしょうか。

条文と,近年の裁判所の判断を例に挙げて解説していこうと思います。

◯条文の確認
刑法177条 強制性交等「十三歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下,「性交等」という。)をした者は,強制性交等罪とし,五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。」

刑法178条2項 準強制性交等「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,前条の例による。」

条文を読むと,

強制性交罪は,故意をもって,暴行又は脅迫を用いて,相手の抵抗を著しく困難にした状態(抗拒不能状態)で,性交をした場合に成立することが分かります。

準強制性交罪は,故意をもって,相手が抗拒不能状態に陥っているのを利用したり,暴行又は脅迫以外の方法で相手が抵抗し難い状態にしたりして,性交した場合に成立することが分かります。

抗拒不能状態の相手に対して性交等をすることを,一般に「無理やり」性交をしたと言います。

また,故意とは,「自分が犯罪をしていると分かっていること」を指します。

しかし,どのような事情があれば,実際に「抵抗が難しかった(抗拒不能)」と認められるのか,故意がある(相手が抗拒不能であると分かった上で強制性交をした)と認められるのかは,決まっていません。

それぞれの事件の具体的な事情をもとに判断されることとなります。

この,「具体的事情から判断する」部分で,一般の人と法律家の間で意見が食い違うため,性犯罪の無罪判決は話題となりやすいのです。

それでは,近年の性犯罪無罪判決を見てみましょう。

近年の性犯罪(強制性交・準強制性交)無罪判例

昨年3月に,性犯罪無罪判決が4件相次いで下されたことが話題になりました。
それぞれ概要を見てみましょう。

(判決全文が公開されていないものが含まれており,事実の真実性を保証するものではありません。)

・福岡地裁久留米支部平成31年3月12日判決
女性がテキーラのショットを一気飲みさせられ,泥酔していたところ,男性が女性と性交渉をした事案。
裁判所は,女性が抗拒不能であったとしたが,多少言葉を発することはできており,男性は女性が抗拒不能ではないと思って性交渉に及んだ可能性があるため,強制性交(当時強姦)の故意が認められないとした。

 

・静岡地裁浜松支部平成31年3月19日判決
男性は,深夜に女性をナンパし,女性の身体を触る等した後,口腔性交(いわゆるフェラ)をさせたが,女性が嫌がったため,自ら陰茎を触って射精した事案。
裁判所は,男性が徐々に行為をエスカレートさせていき,女性に拒絶された段階で行為をやめた可能性が残っているとして,強制性交(当時強姦)の故意(抗拒不能の認識)が認められないとした。

 

・名古屋地裁岡崎支部判決平成31年3月26日判決
男性は,実の娘が中学2年生の頃から何度も性交渉していた。女性は,弟に性被害を訴えており,父親との性交渉を嫌がっていた事案。
裁判所は,これまでに生命・身体に重大な危害を加えられたような状態ではないし,性交渉に応じる他選択肢がないと思い込まされていたような場合でもなかった(心理的抗拒不能ではない)ため,抗拒不能状態であるとは認めなかった

 

・静岡地裁平成31年3月28日判決
男性は,実の娘が小学5年生の頃から,約2年間週3回程度,娘の部屋で娘と性交渉をしており,「やめて」と言われてもやめなかった疑いをかけられていた事案。
裁判所は,同室の布団で寝ていた妹や隣の部屋で寝ていた家族が気づかないのは不自然であるとして,性交渉があったとは認められないと判断した。

 

最後の判決は,そもそも性交渉の事実がなかったという判断だったのですが,その他の判決は,抗拒不能状態があったとは言えないこと,又は抗拒不能状態の認識(強制性交の故意)があったとは言えないことが認定されています。

世間の反応を見ていると,「抗拒不能」,つまり抵抗が難しい状態とは何なのか,「抗拒不能状態の認識」とは何なのかが,一般的なイメージと法律上の判断で食い違っているように思われます。

どれくらいの危害が加えられた場合に抗拒不能となるのか,また,どのような要素があれば抗拒不能状態の認識があると認められるのかは,法律家の間でも意見が分かれる部分であり,専門的知見がなければ的確にアドバイスできないところです。

弊所では,性犯罪についても多く取扱っており,経験豊富な弁護士が対応いたします。
性犯罪の被害に遭われた方,加害者となってしまった方どちらについても適切なアドバイスをさせていただきますので,ご相談をお寄せください。

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